TRIX T23333-T23337
Schnellzugwagen Ep.IIIa

Text: Akira
Pw4uee-37 im F163 "Loreley-Express" 1956

[はじめに]
2005年メルクリンの"Rheingold"-Setと同時にTRIXからも同形式の青色Schuerzenwagenが発表されました。メルクリンとTRIX製品は同じ金型を利用したモデルですが、メルクリンは1956年以降の2等級制時代であるEp.IIIb仕様、TRIXは実車が非常に短い期間である1955年から1956年迄のモデルである3等級制時代のEp.IIIa仕様となりました。メルクリンでリリースされたEp.IIIb仕様の#43209/#43219セット#43237/#43238セットは、食堂車が車体番号を除いてほとんど同じ仕様である一方、座席客車については、車体横の切抜き文字や等級表記が大きく違う等、メルクリンモデルとは随所に違いが見受けられる他、特筆されることとしてEp.IIIa/b両時代の鉄青色のF-ZugのSchuerzenwagen編成には欠かせない荷物車モデルも今回TRIXからリリースされました。
ここは、メルクリンモデルを取扱う当サイトではありますが、今回はメルクリンとTRIXが同じ経営の元で運営/生産されていることや容易に交流3線式に仕様変更出来ることもあり、TRIX製の鉄青色(F-Zug仕様)Schuerzenwagenシリーズの新製品レビューをお届けいたします。
なお、PwM-Specialの"F-Zug von Maerklin/Trix"ページでもこのモデルを取り上げていますので合わせて御参照いただければと思います。

[モデルと実車]
この客車群は、戦前のDRG(Deutsche Reichsbahn Gesellschaft)時代に製造された車輌でGruppe39といわれるシリーズから成り立っています。モデルは、Ep.IIIa時代(1945-1956)のDB (Deutsche Bundesbahn)所有の1/2等合造車、1/2/3等合造車、3等車、荷物車とDSG(Deutsche Service Gesellschaft der Bahn mbH)社所有の食堂車の4種からなり、いずれもSchuerzenwagenと呼ばれる空気抵抗を減らすためのスカートを取り付けた独特なフォルムが特徴となっています。
実車では、Schuerzenwagenとして1938年から製造され、戦後の1951年から一部の車輌がF-Zug向けに車内のリニューアルと外観塗装色の変更(FlaschengruenからStahlblau)が行われました。(例:ABC4ue-39は1951年にABC4uewe-39/52へと変更)また、車体番号も1955年に変更されたことにより、食堂車/荷物車を除く座席客車モデルは1955年から等級制変更の1956年までの僅か1年間のみ存在した仕様ということになります。

なお、モデルは、全て単品でリリースされています。
各モデルの詳細は以下のとおり。

製品番号 形式 車体番号 REV標記 備考
T23333 AB4uewe-39/52 11 642 Kar 13.12.55 1/2等合造個室客車
T23334 ABC4uewe-39/52 14 540 Kar 13.12.55 1/2/3等合造個室客車
T23335 C4uewe-38/52 17 469 Kar 18.12.55 3等個室客車
T23336 WR4ue-39 DSG 1173 (P) 18.12.55 食堂車
T23337 Pw4ue-37 105 060 Kar 1.6.56 荷物車

以上5種のうち4種の個室座席車/荷物車のモデルは、車体色がStahlblau (RAL6011)、屋根は銀色。窓上、窓下、裾上に白帯が3本入っています。車体中央には国際路線向けのマーク"DEUTSCHE BUNDESBAHN"文字が銀色で印刷されています。
台車は、全て"Bauart Goerlitz"です。全てのモデルの車体番号は異なる番号で印刷され、メルクリンのモデルとも別番号になっています。
REV標記や車体番号を見るとEp.IIIa末期の運用に使用されたF-Zug列車がモチーフであることがわかります。
牽引機関車は、ドイツ国内がBR01形、BR03.10形、BR23形重連、BR41形、スイスとの国境地帯にはDBのBR75形、オランダ国内では3900形が運用されており、NS3900形を除けば生産完了品も含めて全てメルクリンより製品化されています。
(より詳しく実車についてお知りになりたい方はRailways in Germanyサイトの「"Rheingold" 1951-1962」のページをどうぞ。)
以下、各モデルの詳細を記します。


[T23333]
AB4uewe-39/52。1/2等合造個室客車です。Ep.IIIa時代では、等級表示が出入口扉横に表記されていますが、この1/2等合造客車の場合、1等、2等の数字が左右の扉の両方に縦に並んで表記されていることが特徴です。ちなみにこの客車の実車は1等部分の個室が車輌中央に2室あり、4人分の座席が配置(2等は6人分)され、個室自体の寸法は2等の個室と同様です。
モデルは、リリース当初の初期ロットでは車体中央に表記されている"DEUTSCHE BUNDESBAHN"の文字が非常に小さく印刷され、その大きさは、ちょうどNゲージ(縮尺1/160)のサイズ程で、MINITRIXからもNゲージで同形式のモデルがあるため、おそらく印刷ミスと思われますが、2次ロット以降では、正しいサイズの表記に改善されました。また、室内装備はメルクリンのEp.IIIbの1等車(Ep.IIIaでは2等車)部分と全く同じです。つまり中央の2室ある4人掛けシートの1等部分も2等車と同じ6人掛けのシートがあるのは、見えない部分ながら引っ掛かるところです。
その他はメルクリンと同様の仕上がりで好感が持てます。印刷されたサボは、メルクリン製品とは反対方向(Hoek vam Holland - Basel Bad)となっています。

初期ロットのNゲージサイズ?の"DEUTSCHE BUNDESBAHN"文字(T23333)

[T23334]
ABC4uewe-39/52、1/2/3等合造個室客車です。実車では、1/2/3等の3つのクラスの個室が同居した車輌ですが、モデルのインテリアでは、3等4室と2等2室の個室(いずれも6人用個室)の他、本来ならば中央に1室ある1等(4人用個室)が2等個室として再現されているのは少し残念な処です。
また、このモデルもT23333同様初期ロットの"DEUTSCHE BUNDESBAHN"文字が小さく印刷されリリースとなりました。その後、正しい文字の大きさになって再リリースされていますが、一部のモデルは小さい文字の上に車体色でコーティングし、その上から正しい大きさの文字を印刷し直しているモデルもあります。これは気になる程のものでもないですが、良く見れば気付きます。

[T23335]
C4uewe-38/52、3等個室客車です。モデル自体は、等級表示など印刷部分を除けばメルクリンと同様の仕上がりで好感が持てます。印刷されたサボは、メルクリン製品とは反対方向(Hoek vam Holland - Basel Bad)となっています。

[T23336]
DSG食堂車モデルの車体色はRubinrot (RAL3003)、屋根は銀色、窓下と裾上に黄色帯が2本入っています。車体中央にDSG文字とその左右にMITROPA AG時代からのマークが黄色で印刷されています。出入口ステップにも銀色が差してあります。
車体番号はDSG 1173(P)で、メルクリンの"Rheingold"セットの食堂車とは、DC車輪や車体番号を除けば、塗装色や屋根のデティールに至る迄(REV表記も!)全く同じモデルであると言って良いでしょう。
台車は、"Bauart Goerlitz"の長尺タイプです。

左がメルクリンの43237セットの食堂車、右がTRIXブランドのT23336。番号以外は全く同じ。

[T23337]
Pw4ue-37。このモデルのみメルクリンではリリースされていないので、今迄メルクリンの"Loreley-Express"セットを購入した方々には待望の製品であることは間違いない荷物車モデルでしょう。このモデルは、"Loreley-Express"や"Rheingold"の編成にはなくてはならない存在の荷物車ですから、今迄はFLM社の荷物車を使ったりしていた方も少なくなかったと思います。TRIX製であるとはいえ、現在ではメルクリンと金型も(おそらくアッセンブリも)共通ですし、車輪交換により交流3線式仕様になるため、私自身歓迎しています。
この荷物車の特徴は、まず、他の客車に合わせたスカート付きのSchuerzenwagenであることと、屋根上に大きく突き出たDachkanzelと呼ばれる見張り窓であり、この形状もスカート同様、空気抵抗低減のための両端が萎んだ独特の形状となっています。
残念な部分は、実車にこのモデルと同じ車輛がないことでしょう。いわゆるGruppe 35系列と呼ばれる出入口が引っ込んでいてスカートのない客車シリーズの荷物車がF-Zug色に"DEUTSCHE BUNDESBAHN"の文字を車体横に入れての写真を良く見ます。Eisenbahn-Journalから発行された"TEE-Story"誌には、スカート付きの同系列荷物車に"DEUTSCHE BUNDESBAHN"文字入りの"F9 Rheingold-Express"写真を発見したのですが、残念ながら見張り窓の形状がTRIXモデルとは違います。見張り窓は後付けパーツですから、将来的に是非正しい仕様でのリリースを望みたいところです。また、2007年にはFleischmann社とのコラボレーションで前述したGruppe 35系列客車がリリースされる(2等車と食堂車)ので、FLM社から既にリリースされている同系列荷物車の登場も期待したい処です。

モデルの出来は、フルスケールだけのことはあり、形状、印刷共に素晴らしいもので、REV標記では1956年とありますので、Ep.IIIa/bの両時代に対応出来るモデルであり、時代的にみてもTRIX/メルクリン製の両方に対応する重宝なモデルと言えましょう。

T23337 荷物車のハンドブレーキサイド面
T23337 荷物車のDachkanzel 上部


[感想]
先にメルクリンから発売された"Rheingold"セット以上に話題になり、期待を持ってリリースが待たれたモデルがこのTRIXの5種の客車群です。その要因は何と言っても、今迄になかった3等級制時代のEp.IIIaという仕様設定、更に初めての荷物車の登場と、ほぼ同じ製品が既にメルクリンからリリースされているにも関わらず新鮮な感覚を持って受け入れられようとしていたモデルです。そして、やはり素晴らしい仕上がりと言えましょう。また、この客車群は列車名を指定せず、敢えて「ライン河畔を走る長距離優等列車の客車」としている点では、"Rheingold(-Express)"でも"Loreley-Express"でも使える客車として汎用性を持たせた点は実車でも同様かも知れませんが、模型でも重宝します。
一方、細かなディテールに目をやれば、精密に印刷されたサボには、メルクリンの"Rheingold"セットと同様の正しい印刷位置や実車に忠実な当時と同じサボの書体など、文句の付けようがない程です。
史実として正しいかどうかは不明ですが、サボに表記されている行き先が、"Basel SBB"(スイス内Basel駅)ではなく、"Basel Bad Bf"(ドイツ内Basel駅)となっていることも少し気に掛かっています。1955年当時は、既に"Basel SBB - Basel Bad Bf"は、ドイツの機関車が直通しています。どのような経緯でこのような印刷になったのかはわかりませんが、興味深い部分ではあります。

客車のREV標記や車体番号を見てみると、このシリーズは1955年から56年を想定したもので、Ep.IIIa時代の末期と言えます。メルクリンの"Loreley-Express"や"Rheingold"の両セットが1956年を想定したものであるので、非常に近い時代に設定されていることは、メルクリンの意図する部分かも知れません。というのも、荷物車についてはREV標記が1956年6月1日となっており、これはまさしくUICによる3等級制から2等級制への移行2日前(移行日は6/3)であるため、この荷物車については、Ep.IIIaとEp.IIIb両方で使える様に意図的に考えたものであると深読み出来る訳です。(もっとも荷物車は等級標記がないため、どちらの時代でも使えます)
もちろん、REV表記と車体番号以外の部分では全く同じ形状/塗装である1951年に戦後始めて再開された"Rheingold-Express"から1956年の2等級制移行迄の期間の対象列車全てに使える?モデル群でもありましょう。(1951年から1955年迄の食堂車はCIWLとなります)
編成については、基本的には"Rheingold"(1953年から54年迄"Rheingold-Express"名)は1/2等客車+荷物車+食堂車。"Rheingold-Express"(1951年から53年迄)、"Lorerey-Express"は、1/2/3等客車+荷物車+食堂車での組成となります。(F164 "Rheingold-Express" 1951の編成表を参照)
1955年夏ダイヤからは、このCIWL食堂車はDSGの車輌/サービスに変更されたため、短期間(1955年から1956年)ながら、42281"Glueckauf"セット、TRIX T23347"Domspatz"セットのWR4uee食堂車や、ここで紹介したモデル(T23336)などのSchuerzenwagen食堂車を組み合わせての組成が可能です。(このモデルを詳しく見ると1955年12月以降が検査日なので、ちょうどDSG食堂車が組成されていた時期になります)
牽引機関車については、前述したようにオランダの3900形を除いてほぼ全て揃っています。

今回のTRIX製モデルは、独自でEp.IIIaの編成を作るにしても、メルクリンのモデルを補完するものとしても非常に重宝する客車群です。個人的には、印刷ミスが解消された今、本当にお薦めできる客車モデル群と断言出来ましょう。


[最後に]
期待の大きかったEp.IIIaのF-Zug向け青色Schuerzenwagenであっただけに満足のゆく製品で、1951年から1956年迄のドイツの戦後高度経済成長初期の優等列車の再現をされたいファンの方全てにお薦め出来るモデル群です。また、昨今の流行である限定生産にならなかったのは、評価されるべきでしょう。何故なら今迄リリースされて来たメルクリンブランドの鉄青色Schuerzenwagen(F-Zug仕様)は今迄全て限定生産であったからです。このシリーズに関しては安心してゆっくりと購入できます。
今回、TRIXブランドのみのリリースとなりましたが、蒸気機関車牽引時代最後の"Rheingold(-Express)"/"Loreley-Express"列車のモデルだけに、オランダの3900形蒸気機関車や1100形電気機関車も含めて今後メルクリンからのリリースに期待したいです。
また、TRIXは本来2線式の仕様でリリースされていますが、3線式用車輪を交換(販売店でも可能)することによりメルクリンとほぼ同じ仕様のモデルとなります。



[注意]
このレポートは、エンドユーザー個人の立場で記述されたものですので、製造者、輸入商社、販売者などには一切の関係はありません。また、記述内容の保障もないことをご了承ください。

[参考文献]
Die F-Zuege der Deutschen Bundesbahn: http://www.heinrich-hanke.de/
DSG Speisewagen und H0-Nachbildungen: http://www.speisewagen.net/
"Rheingold 1951-1962" / Railways in Germany: http://www.asahi-net.or.jp/~ny8h-ky/

(Text: Akira

公開:02. July. 2005
更新:
14. Mar. 2007

御意見や御指摘などお待ちしております。是非メールでお寄せください。