39120 BR E10.3 (DB) Ep.III

Text: Akira
BR E10 345 DB Ep.IIIb


[はじめに]
2006年2月にドイツのニュルンベルク国際玩具見本市(Spielwarenmesse)でメルクリンから発表された新製品のハイライトの1つがこのモデルです。
2006年の新製品のテーマは50年代60年代の高度経済成長時代に華開いたドイツ国鉄(DB)のスター達にスポットを当て、01形を始めとする大型蒸気機関車からレールバス迄今迄にない製品ラインナップをメルクリンでは揃えました。
その時代の中で、忘れてはならない機関車の1つが、Buehgelfalten(ズボンの折り目)と呼ばれる鼻筋の通った半流線形のE10形電気機関車です。メルクリンでは、以前から樹脂製ボディのE10形Buehgelfaltenをリリースしていましたが、登場時の流麗な姿ではなく、後に流線形パーツを外された一般仕様のものでした。今回、全く新規に製作された金型を使って新設計で全金属製により製作されたE10.3形は、私も期待を持って迎えました。

以下にそのファーストインプレッションを記したいと思います。



[モデルと実車]
この機関車は、一般のE10形機関車を最高速度160Km/hに引き上げた当時の長距離優等列車F-Zug向けに開発された機関車です。
当時、Rheingold/Rhienpfeilが最高速度160Km/h仕様の新しい客車の完成を急ぎ、1962年に完成投入されました。しかし、同時に計画されていたこの機関車の完成が間に合わず、やむなく一般形のE10形機関車の歯車比を変更してE10.12形(E10 1239-1244)として運用された経緯があります。その後、この機関車も完成し、改造された一般形のE10.12形と共に同じ形式名を名乗ってE10.12形(E10 1265-1273)として運用につきました。
その後、このE10.3形が完成し、(Rheingold/Rheinpfeil)F-Zug用に投入され、晴れて運用につきました。同形2機のE10.3形が最高速試験に挑み、2機共に時速200Km/hオーバーを記録しました。
Rheingold/Rheinpfeil向けのE10.12形とは塗装以外にも前面手摺や前面ステップの有無などがありますが、特徴的な前面のスカート形状や一体型エアフィルターカバーなどは共通しており流麗で美しい姿です。
1968年のUIC規格番号化によりE10形から112形を経て114形、また113形ともなり、現在では一体型エアフィルターカバーやスカートが外され、優等列車の運用からも外されていますが、一部は元気に現役を守っており、独特のBuehgelfaltenの姿で活躍しています。
実車の詳細は、RiGサイトの同機についての記述を御覧ください。

モデルは、原形のE10.3の姿を再現しています。全体が金属製で、屋根、ボディ、台枠下回りと3色で塗装されています。屋根は、Alminium、ボディはKobaltblau、台枠下回りはTiefschwarzで適度に艶を落としています。また、パンタグラフは最近の電気機関車同様赤色塗装です。
最初に、このモデルを手にした時、小振りなモデルであるにも関わらず、かなりの重量感を感じました。さすが全金属製と感心しながらボディを外すと、台車とスピーカー付き制御基盤とモーター及びギアユニットだけになります。以前の様に台枠部分とボディが分割する方法ではありません。ちょっと驚いたのは、金属製のボディカバーです。裏側から見ると今迄になく肉厚が薄く、重さも金属製とは思えない(樹脂製と見間違える?)程の薄さと軽さです。しかし、モーターユニットは全体が金属で覆われており、その分充分な重さがあり、トータルでは重い機関車と判断出来ます。ボディには運転室が別パーツで取り付けられており、驚く程のディテールです。運転室のハンドル形マスコンまで別パーツ(しかも実車同様黒色!)であまりの出来の良さに、運転手の人形を載せたり、金属製120.0形モデルの運転室照明が欲しいくらいです。
ボディには、別パーツで各種ジャンパ栓やスクリュー式連結器、スカートの一部などが同梱されていますが、ボディサイドのブレーキ栓?以外は、カプラーを外さなければ取り付けられません。画像ではブレーキ栓?のみ取り付けて撮影しています。
モーターは小型Cサインモーターが両軸に繋がっており、全軸駆動となっています。心配していた低速域での走行は、旧型Cサインモーターやc90デコーダーで制御する従来型の直流モーター、またMAXXON社などのモーターに比べるとまだ劣る部分がありますが、だからと言ってドタバタする走りでもなく、許容範囲と言えます。これは、モーターの制御にもう少し熟成が必要であるからかも知れません。時が解決するものであれば良いと思います。

デジタルデコーダーは、もうお馴染みのmfxで、サウンドなし仕様です。しかしながら別にサウンド回路が設けられており、警笛と駅の構内アナウンスを聞くことができます。逆に言えば、それだけのサウンドに対して、チャンバー付き2連装のスピーカーがおごられており、ちょっと贅沢?かとも思います。スピーカーは下に向いて取り付けられており、ちょうど台車とボディの隙間から音が出るように配置され、中々上手なレイアウトと感心しました。他には、LEDの前照灯/尾灯(f0)、漸次加減速(f4)があります。Central Stationのエディット機能で、入換用速度調整機能を付加することが出来ます(カメマーク)。
台車のカバーを外してみると、今迄のメルクリンモデルとはちょっと違う印象を持つギア配置でした。これが両方の台車に付けられているため、牽引力は充分ではないかと考えられます。また、全軸駆動のためか、ゴム製のトラクションタイヤは、両台車内側に1車輪づつ左右に分けて取り付けられています。

さて、問題点ですが、心配した走り装置は及第点だと思います。しかし、全く心配していなかった部分に大きな問題を見つけました。これは、理解していれば問題ないでしょうが、今回初めてボディと台枠を外す際にネジの場所を見つけることに苦労しました。ネジは台車を通してその奥にあり、それを外すことでボディも外れますが、台車の影でほとんど見えません。よって初めての場合、私の様に別のネジを外してしまったり、ネジ位置を特定出来ないトラブルに見回れる可能性があります。メルクリン製品の今迄のイメージでは、簡単に分解出来るイメージが強かっただけに、この変化は驚きに値しました。また、ネジを外せてもボディを外したり取付けたりする際に、台車の間にある樹脂製の機器パーツを壊してしまう可能性があります。同時に前頭部分のスカートは薄い樹脂パーツで出来ており、ここを持ってボディを外したりするのも危険です。このあたりは特に慎重に作業をする必要がありますので、御注意ください。

フロント窓下の手摺も美しく再現。LED前照灯/尾灯は光漏れも全くなく好印象。


[デジタルファンクションの仕様]
mfxデコーダーの大きな特徴である、自動呼び出し機能により、Central Station(以下CS)、及びMobile Station(以下MS)では、自動的にコントローラーに車輛の存在を知らせ、すぐに操作可能となります。
なお、Control Unit(以下CU)では、(工場出荷時)アドレス「10」を呼び出すことで、一部の機能が制御可能となります。
この車輛に内蔵されるmfxデコーダーの機能は以下の通り。

--- Control Unit ---

funktion:前照灯/尾灯
f1:-
f2:駅構内出発アナウンス
f3:警笛
f4:漸次加減速

--- Mobile Station ---

ライトボタン(f0):前照灯/尾灯
ピクトグラム(f2):漸次加減速
ピクトグラム(f4):警笛
ピクトグラム(f8):駅構内出発アナウンス

--- Central Station ---

ピクトグラム(f0):前照灯/尾灯
ピクトグラム(f2):駅構内出発アナウンス
ピクトグラム(f3):警笛
ピクトグラム(f4):漸次加減速

屋上機器やパイピングも最新のメルクリンの水準で好ましい。

一体型のエアフィルターカバーは、実車同様フィルター部分の彫刻に変化がある。台車も実車に忠実な仕様。

今迄のメルクリンからは信じられない程向上した運転台のディテール


[感想]
このモデルは、2月のニュルンベルクメッセでマスターモデルを見て以来、リリースを楽しみにしていました。ROCOからは、以前からこのモデルをリリースされ、Ep.IIIのF-Zug編成を楽しむことが出来たのに対し、メルクリンからは中々私のツボにハマるモデルが少なかったからです。しかし、このE10.3形モデルを初め、2006年の新製品は、欲しいモデルが目白押しである意味選択に困ってしまったのも事実。しかし、今ここにE10.3形がいることに満足感がひとしおです。

とは言ったものの、私が手にする前から少しづつ既に手にされた方々のインプレッションが届き、走行性能に問題点を見い出す部分もありました。私が手にしたモデルは、最初少しドタバタ感がありましたが、CSで若干の調整と高速でモーターとギアを回転させることで油を行き渡らせ、ほぼ満足のゆく走りになりました。以前のモーターのような感動する動きには遠いのも確かですが、常に新しいことにチャレンジするメルクリンの技術者には敬意を表す意味でも、今後のモーターと制御機器の熟成には期待する処です。
同じ電気機関車のモデルで、DCMモーター+mfxの111形、旧Cサインモーター+mfxの103.1形モデルと比較を試みました。低速域での動きは、111形や103.1形モデルに軍配があがります。(やはり安定した低速走行を実現しています)かと言って、E10.3形モデルが悪い走りかと言えば、決してそうではなく、細かなブレが見られる以外は決して悪い走りとは言えません。調整次第では、上手く走る様になるのかも知れないと感じました。更には、最も軽い111形がいかにも重そうな動きを見せたり、E10.3形もどれだけの車輌を牽引可能か試したくなるような重量感のある動きを見せます。
制御と言えば、もうお馴染みのmfxですが、これはサウンドなしのデコーダーでサウンド基盤が別にあります。折角の2連装スピーカーにするならば、サウンド仕様でも良かったのではと思います。また、ファンクションもAUXが残っているのでこれを何らかに利用出来ればと思います。
ボディのフォルム、塗装、印刷など外観上は、最近のメルクリン製品に準じた極めて細かな部分迄再現されていて(それでいてすぐに部品が取れたりする様な心配もなく)好感の持てるものです。
ノイズに関しては、Cサインモーター+カルダンシャフトギアのお陰で、DCMモーターより低減されている感じがします...が、集電シューが同じなので、そこからのノイズが相変わらずあります。よって、ノイズに関してはさほど向上が見られてとは感じませんでした。集電シューを静音タイプに変更すれば、劇的にノイズが減るのかも知れません。

全体的な感想としては、オプティカルな部分、つまり外観は非常に高水準であり高く評価が出来ます。一方、走りに関しては、ほぼ満足出来る程度。そして残念な部分は、非常にヤワになったこと。これだけは、何としても改善してもらいたい部分です。手で触るのが恐くなる様なモデルは、メルクリンの製品哲学に反しているからです。それとも、その良き伝統を崩して迄ディテールにこだわったりするのが、最近のマーケティングなのでしょうか?本当に疑問です。

とは言え、このモデルはEp.IIIbには欠かせないモデルです。最新のUIC-X客車を始め、Schuerzenwagenの編成やRheingold/Rheinpfeil用客車でも似合う機関車でしょう。この一台があれば、きっとレイアウトに華やかりし60年代の鉄道風景が蘇るでしょう。

ボディを外す時のネジは台車の隙間奥にあるので見つけるのに苦労する。

ボディを外された下回り。デコーダーや2連装のスピーカーが見える。

台車のカバーを外すとギアが見える。これが両台車に装着され、全軸駆動である。


[最後に]
このモデルは、E10形Buehgelfalten原形の最初のモデルです。つまり、今後同世代の新型客車牽引のE10.12形(ブルー/ベージュ)やEp.IVの112形(TEE色)など、この流麗な車体デザインに似合う魅力的なバリエーションの登場も今後期待できるでしょう。いずれにしても今回のモデルは、汎用性の面からも重宝出来る機関車の一台です。
まだ、モデルや実車について不明な点が多々あり、書き留められなかったことが残念ですが、これら不明な点が明らかになり次第ここに書き加え更新をする予定です。もし、ここの記述について御意見も含めて足らない部分があれば御指摘ください。また、詳細を御存じの方は、御一報いただければありがたいです。

[注意]
このレポートは、エンドユーザー個人の立場で記述されたものですので、製造者、輸入商社、販売者などには一切の関係はありません。また、記述内容の保障もないことをご了承ください。

[参考文献]
写真で楽しむ世界の鉄道3」交友社刊
"Railways in Germany" http://www.rig-bahn.jp/

(Text: Akira

更新:01.Dec.2006
公開:29.Nov.2006


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