26610 Henschel-Wegmann-Zug (DRG) Ep.II

Text: Akira
BR61 001 + Vier Reisezugwagen (Henschel-Wegmann-Zug)
[はじめに]
2004年11月にドイツ・ケルンで行われた一般向け鉄道模型ショー「IMA2004」に紫色とクリームのツートンカラーの車体にシルバーのスカートと屋根、そして客車列車には見えない流麗なフォルムの蒸気機関車牽引列車のモデルが2005年Insider-Modellとして発表されました。これが今回御紹介するHenschel-Wegmann-Zug(以下HWZ)です。
このモデルは、前年のBR05形と同様、戦前の高速旅客列車がインサイダーモデルのモチーフとして選ばれました。私達にはほとんど実車を見れない列車でしたが、当時のドイツの鉄道技術は世界最高峰のレベルと言っても過言ではないように、現在でも当時の流麗かつ技術的にも最高水準の列車群は現代の私達から見ても魅力的であり、惹き付けられるものがあります。
このHWZが活躍した戦前のドイツの時代背景と共に、この機関車と客車で組成されたモデルの魅力をここでお伝えできればと思います。


[モデルと実車]
このHWZの実車は、1936年からBerlin-Anhalter Bf. - Dresden Hbfを運行したBR61形蒸気機関車と4両の専用客車で組成された列車で、いずれも戦前のDRG(Deutsche Reichsbahn Gesellschaft)車籍のものです。
このセットに同梱されているBR61 001蒸気機関車は、この列車のためにHenschel社で設計/製造された流線形カバーを纏った2C2タイプ車軸配置のテンダー内蔵型機関車です。また、このBR61形に牽引される客車は、同じく前後部が流線形になった客車4両でWegmann社の設計/製造です。このため、この列車はHenschel-Wegmann-Zugと呼ばれました。BR61形機関車には、数多くの新しい試みが施され、その1つはSchafenberg-Kupplungと言われる密着式連結器の採用で、現在でも固定編成の列車に使われている連結器です。その他、暖房/空調システムや最新のブレーキシステムなども採用され当時のハイテク満載の列車でした。また、この列車はBerlin - Hamburgを結ぶ"Fliegende Hamburger"の俊足に負けない高速列車を目指していたため、スカート付き流線形ボディや全断面幌などの徹底した空気抵抗低減のための装備を誇る一方で、機関車/客車双方に軽量化構造が取り入れられました。機関車の動輪は3軸で直径2300mm。これら努力の結果、試運転では最高速度175km/hを記録しました。また、営業運転では、全長179,9KmのBerlin - DresdenをD-Zugとして、最高速度160Km/h、平均速度106Km/h、所要時間約100 分で結びました。当時、この区間を01形や03形を使った旅客列車の最速運転でもこのHWZの運転時間には遠く及びませんでした。その後、1939年には、BR61 002が登場しましたが、軸配値が異なり、2C3となりました。その他、002号機はヘッドライトの小型化や、除煙版の取り付けなど細かな点で001号機とは異なった形状となっています。

客車は、専用の展望室付き食堂/荷物/郵便合造客車(SWRPwPost4ue-35)、2/3等合造客車(SBC4ue-35)x2、展望室付き2/3等車(SBC4ue-35)の3種4両の固定編成で組成され、1939年には1両の展望室付きSBC4ue-35が追加製造されました。客室は全て6人用個室で、中央に2等車2室(中間客車)または4室(展望室付き客車)と両サイドに3等車を持っています。エクステリアはいずれの車輌もSchuerzenと呼ばれる空気抵抗を減らすためのスカートと全断面幌を取り付けた列車全体が一体となった独特なフォルムが特徴となっています。
この列車は、Ep.IIの3等級制時代で不思議なことに1等車はなく2/3等級での組成ですが、この車輌の2等車は1等と変わらない設備と記されています。

この列車の公式デビューは、1935年3月31日メーカーから引き渡された後、営業運転の始まる前の同年7月14日から10月13日に渡ってNuernbergで行われたドイツ鉄道開業100周年記念行事の時でした。
営業運転中は、MITROPA社による食堂運営とサービスがおこなわれていました。
戦後、このHWZは西ドイツにおりましたが、BR61形は1951年の事故により廃車。客車はF-Zug "Brauer Enzian"向け客車として改造されながらも生き延び、現在は展望車などが動態保存されドイツ各地の蒸気列車などで活躍しています。
この列車自体は少数の生産で終わった孤高の存在と言えるかも知れませんが、前述したように数々の新しい技術を採用しており、それらの多くは、現在迄繋がる普遍的なものとなっていることからも、完成度の高い列車だったと言えましょう。また機能から来る流麗なフォルムは現在に至っても色褪せていません。それは、日本を初めとする諸外国の鉄道車輌にもこの列車の影響が多く確認出来るからです。

モデルは、Ep.II時代のDRG (Deutsche Reichsbahn Gesellschaft)車籍の全金属製BR61 001蒸気機関車、及び樹脂製の客車は実車に忠実に再現されています。

BR61形機関車は、サウンド付きmfxデコーダー、新型Cサインモーターが装備されています。mfxデコーダーには、おそらくモーター制御用であろう基盤が別に付き、またサウンド用スピーカーは2連装タイプのものが装備されています。集電シューは、メルクリンで初めての静音タイプのものが取り付けられており、M式レール走行用に一般のタイプの集電シューが添付されています。発煙装置はありません。戦前DRG時代の機関車は前照灯2灯でしたが、高速運転対応?向けに05形機関車同様上部にヘッドライトが付いており、デジタルファンクション操作で前照灯とは別に点灯/消灯が可能です。

客車は樹脂製ですが、実車に忠実にモデル化されており、車内装備付きです。この客車が固定編成であるため、車体妻部分には全断面幌が表現されています。R=360mmカーブを走行できるように台車部分のスカートに切れ目があり、台車とは別に連動して回転する仕組みになっています。車内照明の準備がされ、尾灯の点灯はしません。
機関車客車共、密着式連結器がダミーで表現され、その下にクローズカプラーが装着されています。
もちろんインサイダーモデルのため、事前予約を受けた会員向けに1回限りの限定生産となっています。
各モデルの詳細は以下のとおり。

製品番号 形式 車体標記 REV標記 備考
26610a BR61 61 001 機関車
26610b SWRPwPost4ue-35 10 401 30.3.36 展望室付き食堂/荷物/郵便合造客車
26610c SBC4ue-35 10 402 30.3.36 2/3等合造個室客車
26610d SBC4ue-35 10 403 30.3.36 2/3等合造個室客車
26610e SBC4ue-35 10 404 30.3.36 展望室付き2/3等合造個室客車

以上4種5両のモデルは、車体色が紫とクリームのツートン、屋根と裾(スカート)部分がシルバーです。
客車の台車は、"Bauart Goerlitz III Leicht"です。

[デジタルファンクションの仕様]
mfxデコーダーの大きな特徴である、自動呼び出し機能により、Central Station(以下CS)、及びMobile Station(以下MS)では、自動的にコントローラーに車輛の存在を知らせ、すぐに操作可能となります。
なお、Control Unit(以下CU)では、(工場出荷時)アドレス「61」を呼び出すことで、一部の機能が制御可能となります。
この車輛に内蔵されるmfxデコーダーの機能は以下の通り。

--- Control Unit / Mobile Station / Central Station ---

f0(funktion) / 前照灯マーク:前照灯(下部2灯)
f1 / ピクトグラム:ヘッドライト(上部1灯)
f2 / ピクトグラム:蒸気シリンダ走行音
f3 / ピクトグラム:警笛
f4 / ピクトグラム:入換走行(通常の半分の速度)

--- Mobile Station / Central Station ---

f5 / ピクトグラム:炭投音
f6 / ピクトグラム:エアポンプ音
f7 / ピクトグラム:ブレーキ音のoff
f8 / ピクトグラム:インジェクタ−音

--- Central Station ---

f9 / ピクトグラム:蒸気排出音
f10 / ピクトグラム:廃炭排出音

BR61 001 Seitenansicht

[感想]
このモデルは、手元に届く前からドイツのメルクリン関連のファンサイトで機関車の走行上の不具合が話題になっており、特に最近では5極モーターやCサインモーターの登場で特別なものではなくなった超低速走行ができないことと、低速域での車体の振動が問題となっていました。それが一部のものではなく全般的にそうらしく、自らのモデルもそのような症状が出た時には、「やはり」の落胆と何とかしたいと思う気持ちがあり、引き続き自ら検証を行いながら同じモデルをお持ちの他の方とも情報交換を行いつつ、最終的にはメルクリンのサービス部門に問い合わせ、購入販売店を通して修理に出しました。この時のメルクリンのサービス部門及び販売店のレスポンスは(驚きに値する程)非常に迅速なものでした。

それ以外には、機関車では煙突部分にmfxデコーダー他の基盤が設置されており、発煙装置が付けられないのはメルクリンらしくない残念な部分と言えましょう。モデルの到着後、総合カタログで確認すると確かに発煙装置のことは書かれておらず自らの確認不足でした。
この不具合の原因ははっきりしませんが、新開発の小型Cサインモーターにあるような気がします。いずれにしても、修理から直ってくるのを待ちたいと思います。

この機関車のもう一つのウリであるサウンドについては、2連装のチャンバー付きスピーカーの効果もあって、大きなサウンド音と多種多様な音源は、素晴らしいもので、逆にこれで発煙すればもっと実感的になったのにと残念でした。(何とか発煙できないものか....)
ボディのフォルム、塗装、印刷など外観上は、最近のメルクリン製品に準じた極めて細かな部分迄再現されていて(それでいてすぐに部品が取れたりする様な心配もなく)好感の持てるものです。
特に優れた部分としては、R=360通過のためか、従輪と動輪が連接されており、その中間に支点を持っているため、動輪が左右に振れるよう設計されています。このため、C配置の大動輪も難無くR1を通過できます。また、メルクリンとして初めての静音シュ−がついています。従来の集電シューも添付されていますが、これは、M式レールのためであり、逆に言えば新型の静音シューはM式レールには未対応ということでしょう。
そして、この静音シューは確かに静かとは思いましたが、大きなサウンドや車体の振動があるため、効果は薄い様な気もしました。

客車は、全体的な感想となりますが、最近のVT11.5/602やSVT137などの全車両金属製の相次ぐ製品化を見ていると、この価格を考慮に入れると樹脂製であることが意外に思いました。
また、客車は固定編成ながら連結器がクローズカプラーであったり、車内照明や尾灯が準備のみであったりと期待を外され、少しがっかりしましたが、噂によれば2006年には車内照明キットがリリースされるとのことで、安心しました。やはり尾灯は不可欠でしょう。
車内装備はもちろん取り付けられていますが、食堂部分にVT11.5/602のようなテーブルランプがないのは残念で、全体的にあっさりしすぎな印象です。外観を見るとR1通過のための台車部分のスカートが切ってあるのは致し方ない部分でしょう。ボディの形状、塗装や印刷など現在のメルクリンの水準を充分に満たしていると言えます。
ディテールに眼をやると、行き先表示が実車同様窓に掲げられているようにモデルでも印刷されています。これは、VT602のモデルと同じで他の印刷箇所同様、好感の持てる部分です。

何しろ戦前の列車ですから、私を含めて多くのユーザーは眼にしたことのない列車のモデルです。このモデルを通して1930年代の世界最高を誇ったドイツの鉄道に思いを馳せるには充分な完成度と言えるのではないでしょうか.....その走りと発煙を除けば...。
今回のモデルの客車については、戦後F-Zug "Blauer Enzian"として青一色で再びDBで活躍していますので、将来的にこの仕様のモデルもリリースされることが予想されます。楽しみに待ちましょう。

初めて採用された小型Cサインモーターとギアボックス
2連装のスピーカー
煙突下に鎮座するmfxデコーダー他の基盤群
ヒンジで結ばれた従輪と可動動輪
メルクリン初登場の静音シュー
以下はHWZ客車の画像とコメントになります。
SWRPwPost4ue-35(奥)とSBC4ue-35(手前)両展望車の並びです。
実車は各々1両しか無くかつ永久連結器の固定編成のため、このような並びは出来なかったでしょう。
SWRPwPost4ue-35展望室部分です。この客車は、車端に荷物/郵便室があるため、折角の展望部分には乗客が乗れなかったと考えられます。(おそらくDresden Hbf -> Berlin Anhalter Bf. では最後部にこの客車になっていたはず。)
また、戦後のBlauer Enzian仕様に改造された時は、後部窓に荷物押えの格子があったはずですが、デビュー当初では格子があったかは不明です。御存じの方は御一報を。
SBC4ue-35の展望室部分です。実車では、乗客に解放されているため、モデルの室内装備にも椅子が配置されています。3等車の乗客もこの展望室利用が出来るのか不明です。御存じの方、利用されたことのある方?は是非私まで御一報の程...。
SWRPwPost4ue-35の食堂室部分です。
"SPEISERAUM"の表記があります。室内装備はあっさりとした仕上がりです。VT11.5/VT602モデルのようにテーブルランプがないのは残念です。
HWZ客車の連結部分です。全断面幌を再現していますが、同様のVT11.5/VT602と比較すると、全長が長いためかクローズカプラー連結のため、圧着されておらず隙間ができてしまいます。
また、SBC4ue-35中間車(左)と同形式展望室付き(右)でサボの有無があります。サボ無しは印刷忘れと思われます。
[最後に]
まだ、モデルや実車について不明な点が多々あり、書き留められなかったことが残念ですが、これら不明な点が明らかになり次第ここに書き加え更新をする予定です。もし、ここの記述について御意見も含めて足らない部分があれば御指摘ください。また、詳細を御存じの方は、御一報いただければありがたいです。

[注意]
このレポートは、エンドユーザー個人の立場で記述されたものですので、製造者、輸入商社、販売者などには一切の関係はありません。また、記述内容の保障もないことをご了承ください。

[参考文献]
"Henschel-Wegmann-Zug"
"WAGEN" Das Archiv der deutschen Reisezug- und Gueterwagen
GeraNova Zeitschriftenverlag GmbH Muenchen

(Text: Akira

公開:12.Nov.2005
更新:
26.Nov.2005

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